くりっく株365とは?
「くりっく株365」とは、公的取引所として知られている東京金融取引所に上場する株価指数証拠金取引の愛称です。日経平均株価である「日経225」をはじめ、アメリカの「NYダウ」、ドイツの「DAX」、そしてイギリスの「FTSE100」の日本だけでなく海外における株価指数を取引することができます。
ごく一般的な株の取引は指数における買値と売値の差額を決済し、取引単位は100株となっています。しかし、くりっく株365の取引単位は1枚(株価指数×100円)となっています。また、くりっく株365のメリットは以下のとおり。
1)国内外における株価指数を少額から取引できるという
2)ほぼ24時間取引できる点
3)配当が受け取れる
4)レバレッジを効かせることができる
5)決済期限フリー
6)取引時間が長い
7)「買い」の場合に限り、配当相当額が受け取れる(ドイツDAXを除く)
このようにメリットが豊富で取引しやすい特徴を持っているものの、当然ながら以下のデメリットも存在します。
1)ロスカットが設けられている
ロスカットは損失が生じたときに差入れた証拠金以上の損失が発生しないよう、取引を停止するシステムのこと。ロスカットが発動すると保有するポジションが自動的に決済されるので注意が必要です。なお、ロスカットを避けるためには自分でポジション決済を行なうか、証拠金を追加するなどのアクションが必要になります。
2)「売り」の場合に限り、配当相当額の支払いが必要になるくりっく株365は「買い」の場合に限り、配当相当額が受け取れるというメリットを持っていますが、「売り」の場合は真逆になります。つまり、「売り」になると配当相当額の支払いが必要になるので計画性を持った取引を行なわなければなりません。
メリット・デメリットそれぞれが見られるくりっく株365ですが、現在は個人投資家たちから商品性の高さが支持されており、口座数はもちろんのこと証拠金残高が増加傾向にあります。さらに少額から取引できることもあり、初心者に最適として注目されています。
くりっく株365の配当は?
くりっく株365の配当は国内をはじめ、世界各国の株式市場に投資することで得られる仕組みになっています。なお、くりっく株365が取り扱っている株式市場は以下のとおり。
日経225(日本)
NYダウ(アメリカ)
FTSE100(イギリス)
DAX(ドイツ)
注意しなくてはならない点はDAX(ドイツ)のみ配当金がないということ。つまり、DAX(ドイツ)を除く上記3ヵ国の株式市場に投資することで配当を得ることができます。配当のシステムは非常にシンプルなので初心者の方でも取引しやすいメリットを持っていますが、配当と金利の関係を把握しておかないと損をすることもあるので注意が必要です。以下が配当と金利の関係なのでまずは目を通してみてください。
|
買い |
売り |
配当金 |
受け取る |
支払う |
金利 |
支払う |
受け取る |
もっとも注意しなければならない点は買いポジションを保有している場合でも、金利の支払いが生じるということ。
日経225を除く各国の株式市場は外貨金利が考慮されることもあって、配当金を受け取ることが可能な買いポジションを保有した場合、金利を支払う義務が発生します。特にアメリカの政策金利は上がっていくばかりなので、利上げが行われるほど支払い金利は高額になります。
つまり、あまりにも金利が高額になってしまうと夢見ていた「配当金生活」からかけ離れた高額金利の支払いに追われるかたちとなり、赤字になってしまう可能性があります。各株式市場によってメリット・デメリットは異なりますが、配当金のみに注目するなら金利の支払いが0円(2019/2時点)の日経225がおすすめです。
くりっく株365の証拠金とレバレッジとは?
大幅に引き上げられた株価指数証拠金基準額
2018年1月29日、くりっく株365は株価指数証拠金基準額の大幅引き上げを公表しました。例えばこれまで日経225証拠金取引に必要だった証拠金は46,870円でしたが、2月5日から2月16日には69,000円に、2月19日から当面の間は96,000円に。
要するにこれまでの証拠金の倍以上が必要になったということです。
なお、今回の証拠金における制度変更(証拠金の変動)は以下のとおり。
商品 |
1月29日~2月2日 |
2月5日~2月16日 |
2月19日~当面の間 |
日経225証拠金取引 |
46,870円 |
69,000円 |
96,000円 |
DAX®証拠金取引 |
23,570円 |
39,000円 |
54,000円 |
FTSE100証拠金取引 |
10,570円 |
23,000円 |
32,000円 |
NYダウ証拠金取引 |
44,600円 |
76,000円 |
106,000円 |
※赤文字が制度変更によって変わった金額
さて、今回の制度変更によっていかなる問題が発生するのかと言うと、おそらく多くの方が次のように感じるはずです。
「これまでは新規購入者が気軽に日経平均やNYダウなどを40,000円/1枚ほどで購入できたけどそれができなくなる…」
確かに証拠金が大幅に引き上げられたので気軽に購入できなくなることは事実なのですが、問題はそこではなく、既にポジションを所有している方々がこれまでどおり、決算することが困難になるのではないか?という点にあります。
早い話が、今回の制度変更によってお金が足りるの?ということ。
あらためて「証拠金」についておさらいしましょう。証拠金は「差金決済(現物を保有しない)」の取引が損失となった時であっても、決済が可能になるように一定額を預けてその範囲内で取引をする形です。簡単に言ってしまえば、証拠金は担保金と言っても過言ではありません。
例えば金額が200,000円だった場合、証拠金基準額も200,000円になり、商品1枚を売買可能になるということ。しかし、価格は一定ではなく常に変動するものなので、決済をしていなかったとしても利益が膨らむことによって200,000円という金額は計算上200,000円でOKというケースもあれば、損失によって100,000円になってしまうこともあります。
さらに今回のくりっく株365における制度変更の問題点は「有効比率」にも注目しなければならないということ。有効比率は証券会社などによってマチマチですが、同比率が100%を下回ってしまうと追証と呼ばれる追加入金が必須になる場合や、100%もしくは75%、50%を下回ると即決済しなければならない強制ロスカットが発動する場合があります。
少額投資には不向きとなった「くりっく株365」
今回のくりっく株365における制度変更は、「買い」で所持していた場合にかぎって今後価格の上昇を期待することで値上がり益や、そもそもとして証拠金に注意を払うこともないと言っていいかもしれません。
ところが、制度が変更される前の段階でポジションを一旦閉じるなどの<利益確定の売り>が多く生じる可能性は否定できませんし、自覚のない大量ロスカット注文が約定される可能性が出てくることが予想されます。
ロスカット注文は売りにおける決済注文が市場に現れるので、瞬間価格が急激に下がるといったケースが発生してもおかしくありませんし、けっして珍しいことでもありません。だからこそくりっく株365ユーザーは以下の3点に注意して投資していく必要があると思います。
1)口座に追加資金を多めに入れるかの検討
2)現段階で所有しているポジションを決済するかの検討
3)特に何もせず様子を見る
言うまでもなく今回の制度変更(証拠金基準額の大幅な引き上げ)によって、くりっく株365における投資のやり方は大きく変わったと言っても過言ではありません。これまでは初心者でも気軽に投資できることで敷居が低かったものの、今回の制度変更で敷居が高くなっただけでなく、少額投資家にとっては利用しづらくなったと言えます。
常にくりっく株365の情報をチェックしている方であれば、制度変更を把握して対策を取っていることでしょうが、制度変更を把握しないままこれまでと変わらずポジションを保有している方も数えきれないほどいるかと思います。
そもそも投資情報をシェアするなどの仲間がいたり、取引所の更新情報を毎日欠かさず確認している方でないかぎり、今回のような重大な変更に気が付くことはないでしょう。投資商品は動きがあって当然のものなので、ありとあらゆるニーズに応えられるわけがありません。
だからこそ、くりっく株365を利用している投資家は現状を把握すると共に、何をトレードするのかを自分の頭で考えて判断することが重要になります。つまり、最善の選択を行なえるのは他人の意見や判断でなく、自分自身ということです。